中外製薬株式会社
2024/10/29
2025/3/31
目指すのはアルムナイとの“ゆるやかなつながり”。再雇用によってミッションステートメントの実現にも大きく寄与
医薬品
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5,000名以上
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「すべての革新は患者さんのために」を事業哲学に掲げ、医薬品の研究・開発から製造、販売等を手掛ける中外製薬株式会社様(以下、中外製薬)。
2020年、退職者の“再雇用”を目的として制定していた旧制度を大きく刷新。「Official-Alumni.com」の導入とともに、新たな「アルムナイ制度」が立ち上げられました。
「ジャパン・アルムナイ・アワード」ではこれまで二度の受賞*を果たすなど、その注目度も高い中外製薬の「アルムナイ制度」について、立ち上げの背景や具体的な取り組み、得られた成果などを伺いました。
旧制度の刷新によって生まれた「アルムナイ制度」
─ はじめに「アルムナイ制度」を立ち上げた背景をお聞かせください。
2019年、当社が「ヘルスケア産業のトップイノベーターを目指す」という新しいミッションステートメントを掲げたことが、この新しい制度を立ち上げた背景にあります。
より多様なスキルや経験を持った人たち、いわゆる“異能人財”の力を結集させてビジネスを発展させていく必要性が高まり、そこには、一度退職し中外製薬の“外”の世界でさまざまなものを培った「アルムナイ」も当然含まれるであろうと。その可能性を広げるべく、「アルムナイ制度」の発足へ動き出しました。
また、私たちアルムナイ事務局のメンバーが、もともと社内の「キャリア相談員」であることも立ち上げの大きな要因となっています。
これまで私たちは、自身のキャリア構築のために新たなフィールドへ移ることを決めた退職者の方たちを、たくさん見送ってきました。つまり、決してこの会社が嫌いになって辞める方ばかりではないんですね。だからこそ、もしまたここで挑戦したいという気持ちが芽生えたときには、その背中を押してあげられるような環境を整えておきたい。そうした思いが発端となり「アルムナイ制度」の立ち上げに至りました。
─ 制度化において困難なことはありましたか?
以前より「退職者再雇用登録制度」があったものの形骸化してしまっていたため、この制度の“刷新”というアプローチにすることで、比較的スムーズに進めることができました。
具体的には、それまでは「結婚や出産などライフイベントで退職された方」のみだった対象者を、「転職や留学を理由とした退職者」にまで拡大。そして、その目的を「再雇用」から「アルムナイとゆるやかにつながりを持ち続けること」まで広げ、再入社希望の有無にかかわらず、中外製薬とつながりを持ちたいと思ってくれているアルムナイに登録いただくこととしました。
現役社員とともに盛り上げるアルムナイコミュニティ
─ 新制度の発足とあわせて「Official-Alumni.com」を導入されました。アルムナイに向けて、どのようにコミュニティへの登録を促していきましたか?
従来の制度に登録しているアルムナイの方へ告知をしたり、特にコミュニティをけん引してくれそうなアルムナイの方には先行して声をかけ、コミュニティ内での発信や登録への呼びかけなどにご協力いただいたりしました。
また、コミュニティの立ち上げに興味を持った現役社員が退職した元同期に声をかけてくれることもあり、想定以上のスピードで登録者数を増やすことができました。
─ コミュニティは日々どのように運用しているのでしょうか。
登録しているみなさんが、SNSのように気軽に使える交流サイトを目指し運用しています。例えば写真付きで近況を報告したり、アルムナイ同士でダイレクトメッセージを送り合ったり、といった感じですね。
また「プレスリリースでわかること“+α”」を意識しながら、直近の取り組みなど会社からの情報発信の場としても活用しています。
─ そうした日常的なコミュニケーションのほかにも、取り組んでいる施策などはありますか?
2020年の第1回目を皮切りに、これまで5回のオンラインイベントを開催しました。
「アルムナイ制度」立ち上げ2周年の記念イベントでは「中外のナカとソト」と題し、外部講師を招いた講演会を開催。ここでは現役社員とアルムナイとの交流会も実施し、アルムナイの枠を超えた、中外製薬を愛する“仲間”としての新たなつながりが生まれる場になったと感じています
7名のアルムナイ採用が実現。
広がりつつある“異能人財の活躍”
─ 「アルムナイ制度」の立ち上げから今日まで、感じられる変化や成果はありますか?
まず大きな成果と言えるのが、やはりアルムナイ採用の実績でしょう。
「アルムナイ制度」を立ち上げてから今日まで、7名の再入社者が生まれました。退職後に別の世界で身に着けたスキルを持って、あらためて中外製薬でその力を発揮する──。まさに経営において必要としている“異能人財の活躍”が実現しています。
─ 立ち上げ当初から目指していた“ゆるやかなつながり”が実を結んだのですね。
そうですね。また、このコミュニティでのつながりをきっかけにプライベートでの交流が生まれていたり、当社とビジネス連携をしている方がいたりもします。こうした面も大きな変化・成果であると言えるでしょう。
─ 最後に「アルムナイ制度」の今後の展望をお聞かせください。
コミュニティに参加しているアルムナイは再雇用を求めている方ばかりではなく、交流を持ちたい、情報を得たいという方も多くいます。そういった多様なアルムナイのニーズにできる限り応えていけるよう「つながりを広げていく仕組み」と「再雇用につなげる仕組み」の2軸をしっかりと持ちながら、“ゆるやかにつながる”温かいネットワークをつくり続けていきたいと思っています。
「企業とアルムナイの新しい関係」をつくるために、先駆者として取り組む人や企業に焦点を当て、優れた取り組みや模範となる関係性を評価し表彰するもの。
* 2021年に準グランプリ、2022年には審査員賞を受賞。