コラム
2024/11/6
2024/11/28
アルムナイとは〜人的資本経営における新たな視点〜
執筆者:
天野 夏海
アルムナイとは主に人事領域において使われる言葉で、「企業の現役世代の退職者」を指します。アルムナイを貴重な人材リソースと捉え、つながりを持ち続け価値に繋げようという動きが、大企業を中心に注目を浴びています。
アルムナイ(alumni)はラテン語由来の言葉で「卒業生、OB、OG」を意味します。
欧米では大学卒業後もアルムナイ(卒業生)が大学およびアルムナイ同士で接点を持ち続けることを目的に、多くの大学がアルムナイネットワークを用意しています。
また、同じく欧米ではコンサルティングファームやIT企業を中心に、自社のアルムナイネットワークを通じてアルムナイ(退職者)と接点を持ち続けることで、再雇用やビジネス協業などのチャンスにつなげる企業も。
そうした背景から、アルムナイは「卒業生」の意味から転じて、人事領域においては「企業の現役世代の退職者」を指すようになりました。
人事領域におけるアルムナイが日本で注目を集め始めたのは2018年頃。アルムナイを貴重な人材資本と捉え、アルムナイネットワークを構築することでつながりを持ち続け、新たな価値創出をしようという動きが大企業を中心に起きています。
それ以前から外資系企業でアルムナイネットワークを運営するケースはありましたが、日本企業がアルムナイの取り組みを行うようになったのは最近のことです。
その背景として、「雇用の流動化」と「人材不足」の大きく2つの要因が挙げられます。
まず「雇用の流動化」については、終身雇用を前提とした雇用の在り方が変化したことで、生涯一つの企業だけでキャリアを終えるのではなく、「一生に複数社で働く」時代になりつつあります。その結果、自社へのエンゲージメントが高い優秀な社員が新たな挑戦をするために退職するケースも増えているのです。
続いて「人材不足」については、少子高齢化の影響による労働力人口の減少が深刻です。今後も売り手市場は続き、人材不足は年々深刻度を増していくでしょう。
慢性的な人材不足の中、優秀な人材を採用する難易度もまた上がっています。企業にとって優秀な人材の獲得は重要な経営課題であり、企業間の採用競争は年々激化しています。
これらの社会状況を踏まえれば、「優秀な社員を自社だけで囲い続けるのも、新規で採用をするのも、どちらも難易度は上がっていく」のは明確です。
そこで注目されているのが、アルムナイ。
これからの経営の在り方として人的資本経営が注目されていますが、人材を「資源」ではなく「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる対象には、自社の退職者であるアルムナイも含まれます。
つまりアルムナイは人的資本経営とも密接な関わりを持つのであり、アルムナイ関連施策は経営戦略に位置付けられるもの。ゆえに「退職したら関係性も終わり」ではなく、「退職者もまた企業の重要な人的資本である」と捉え直し、退職後にわたり半永久的なつながりを持つことの重要性が増しています。
国もまた、新たな人的資本としてのアルムナイに着目しています。
経団連では経営労働政策特別委員会報告2022でアルムナイ採用の重要性について言及しています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社出版の「2024年の展望」でも
(https://www.murc.jp/kounaru_2024/)
経済産業省による人的資本経営を進める上での基礎資料「人材版伊藤レポート2.0」でも、「動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用 」と「サクセッションプラン(後継者育成計画)」に関する箇所でアルムナイについて言及されています。
4.動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
・経営戦略の実現には、必要な人材の質と量を充足させ、中長期的に維持することが必要となる。
・このためには、現時点の人材やスキルを前提とするのではなく、経営戦略の実現という将来的な目標からバックキャストする形で、必要となる人材の要件を定義し、人材の採用・配置・育成を戦略的に進める必要がある。
〜中略〜
(2)ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、 外部からの獲得
① 本取組の概要
・CEO・CHROは、人材ポートフォリオのギャップに基づき、可能な限り早期に、社員の再配置や外部人材の獲得を検討し、実行する。また、社員が社外で有効な経験を積んで自社に戻ることを奨励し、アルムナイネットワークの活用等を検討する。
〜中略〜
工夫4:アルムナイとの持続的な関係構築
・必要な人材を一人でも多く確保するために、社員一人一人が、自律的なキャリア意識の下で自社を出入りすることを前提に、自社を退職した人材(アルムナイ)と中長期的に優良な関係を築く。
・そのような自律的なキャリア意識を持つ人材が、自社に復帰することを希望した際は、「他社で得た経験・知見に基づいて、貢献をしたい」という目的意識が明確な人材として受け入れていく。
経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」より引用
1.経営戦略と人材戦略を連動させるための取組
・経営環境が急速に変化する中で、持続的に企業価値を向上させるためには、経営戦略と表裏一体で、その実現を支える人材戦略を策定し、実行することが不可欠である。
・このような自社に適した人材戦略の検討に当たっては、経営陣が主導し、経営戦略とのつながりを意識しながら、重要な人材面の課題について、具体的なアクションやKPIを考えることが求められる。
〜中略〜
(5)サクセッションプランの具体的プログラム化
〜中略〜
工夫3:アルムナイとの持続的な関係構築
・自社を退職した人材(アルムナイ)の中でも、他社で得た経験や知見に基づいて、再び自社に貢献をしたいという目的意識が明確な人材は、経営人材としての活躍も期待される。
・経営者経験を持つ人材を一人でも多く確保するため、自社を卒業し自ら経営者となったような人材を迎え入れることも見据えて、アルムナイと中長期的に優良な関係を築く。
経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」より引用
アルムナイの取り組みは人的資本経営、そして人事施策と密接に連動していく可能性を秘めておりますが、企業の目的や規模などによって最適なスタートの仕方があります。従業員数数百人から数万人規模まで、幅広い企業の豊富な事例をお伝えしながら、各社に合ったアルムナイ施策のご提案が可能です。アルムナイの取り組みにご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ハッカズーク 会社概要
会社名:株式会社ハッカズーク(英語名:Hackazouk Inc.)
代表者:代表取締役グループCEO 鈴木 仁志
所在地:東京都文京区後楽2-3-21 住友不動産飯田橋ビル5階
設立:2017年7月
事業内容
・『Official-Alumni.com』の企画・開発・販売・運営
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・人事・採用・アルムナイに関するコンサルティング
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