イベントレポート
2025/4/1
【2024カンファレンスレポート】地域企業の新たな挑戦 〜アルムナイとの関係構築で生まれる可能性と地域の未来〜
執筆者:
安井 智貴
登壇者
永田 潤一
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
人事統括グループ 採用チーム 調査役
大学卒業後、新卒で福岡銀行に入行。営業店で法人や個人事業主の方への営業を経験し、
2021年より人事部に異動。2023年からふくおかフィナンシャルグループの採用チームとして
主にキャリア採用を担当。2024年8月から、アルムナイコミュニティを立ち上げ同事務局
にも従事する。
千馬 英俊
東北電力株式会社
ビジネスサポート本部人財部(人事)課長
新卒入社後、米国留学(経営学修士)、グループ企業再編、組織再構築、人財ポートフォリオ構築などを経験・主導。2022年4月の現職就任後は、キャリア自律性向上を軸とした社内活性化に向け、手挙げ異動、社内外副業制度を導入。2023年からは、変革期にあるエネルギー企業として、社外に広がる人的資本を強化するアルムナイネットワーク構築を主導。
冨岡瞳(ファシリテーター)
株式会社ハッカズーク
セールス兼アルムナイ研究所事務局
求人広告代理店にて大手〜SMB企業の採用課題に合わせた採用最適化・解決に携わり、営業組織のマネジメントを経験した後、株式会社ハッカズークに転職。 エンタープライズ企業を中心としたセールス・マーケティングとして企業のアルムナイの導入支援を行う。経験を活かし自社採用担当も兼務。
【目次】
2024年11月1日、株式会社ハッカズーク主催のアルムナイ・カンファレンスに、東北電力株式会社様(以下、東北電力)と株式会社ふくおかフィナンシャルグループ様(以下、FFG)が登壇されました。
これまで、アルムナイへの取り組みを行う企業は首都圏に本社を構えている企業が主な傾向にあった中で、近年では地元を代表する企業や地方自治体などでも、その積極的な取り組みが見られるようになってきています。
今回はその先駆けとも言える両社に、アルムナイへの取り組みをはじめたきっかけや導入までのプロセス、導入後の社内外の反響などをお聞きしました。
※本記事は2024年11月1日時点の内容をもとに作成しています。
─ まずは両社の人事戦略について、それぞれどのようなお考えのもとで展開されているのかお聞かせください。
永田:
私たちFFGは「積極的な人的投資こそが企業価値向上の源泉である」という考えのもと、事業戦略とリンクさせながら、大きく2つの柱で人財戦略を展開しています。
まず1つ目の柱は「事業戦略を実現する人財ポートフォリオの構築」、そして2つ目が「従業員エンゲージメントの向上」です。これらの好循環によって人財のパフォーマンスの最大化や事業戦略を実現しそして、お客さまの満足により得られた収益をさらなる成長投資・人的投資へとつなげ、FFGとして持続的に成長していくことを目指しています。
千馬:
電力会社は、電力の自由化やエネルギー価格の高騰、カーボンニュートラルへの対応など、大きな変革の時期にあるとも言えます。そんななか目指すのは、一人ひとりのエンゲージメントを高めることによって、個人と企業がともに成長していける組織。そして、そのための人事戦略として特に力を入れているのが「採用」と「育成」です。加えて、東北・新潟地域は、課題先進地と呼ばれるように人口減少や少子高齢化の影響があります。そうした地域の課題や変化する社会に対して対応する事業と組織を実現するための人事戦略を策定しています。
─ やはり両社ともに共通するのが、事業の変化にともない、社員の自律的な成長が不可欠となっていること。そしてそのための“人への投資”に重きを置いているというところですね。
社外の人的資本とも言われるアルムナイへの取り組みもまさにその投資のひとつかと思いますが、こうした取り組みを始めた背景はどのようなものだったのでしょうか。
千馬:
これまでも人的資本においては“社内を見る”と同時に“社外を見る”ことを大切にしてきましたが、あくまでもその“社外”というのは、どちらかというと同じ業界内におけるものでした。ですが、これからの時代に必要となるのは“業界の外”にも視点を置くこと。つまり事業の変化に対応していくためには、自社や業界内にはない知見を持った社外の方との関わりが必要で、たとえば「電力×金融」「電力×IT」といった一見共通点の無さそうな知見の組み合わせによって、世の中にはない新しい価値提供ができるのではないかと考えています。アルムナイは東北電力のことも知っていて、かつ東北電力にはない社外の知見も持ち合わせている、東北電力がこれから新しい価値提供を創造していく上で、とても貴重な存在だと考えています。そのような思いからアルムナイとの関係構築の取り組みを始めました。
永田:
弊社の場合、先ほどお伝えした人財戦略のためには機動的、かつスピーディな人財獲得が求められますが、それにはやはり採用手法の多様化や人財育成が大切になると考えています。たとえば、現在の事業戦略の一つである「既存ビジネスモデルの変革」ではシステム開発の内製化を進めているのですが、そこにはデジタル人財が不可欠です。また事業領域の拡大に伴い、金融に限らず様々な分野の業務で高い専門性を持った人財を必要としています。そういった背景から、アルムナイへの取り組みを始めました。
─ こうした取り組みについて、社内外での反響はいかがでしたか?
永田:
まず社内ではポジティブな意見が多くありました。これまで、退職した元社員とのつながりは個人的なものだけでしたが、こうしたオフィシャルな場を設けることでよりつながりやすく、かつ気軽に相談などがしやすくなったといった声をいただいています。
千馬:
社外の反響も大きかったですね。このアルムナイネットワークの設立をプレスリリースで発信したところNHKのローカルニュースで取り上げていただき、さらにそれを見た地元の企業様から「話を聞かせてもらえないか」とお声がけいただいたこともありました。
─ 東北地方では、アルムナイへの取り組みを始められてる企業様がまだ少ないだけに、ニュースなどでも大きく取り上げられたのでしょうね!FFG様の社外からの反響はいかがでしたか?
永田:
やはり社内の反応と同じようにこのコミュニティに好感を持っていただいていますし、アルムナイからは「やっと始めてくれた」といった声も聞かれ、担当者としては取り組みをはじめてよかったなと率直に思いますね。
─ アルムナイの方からもポジティブな声が届くというのは、非常にうれしいものですよね。
ただコミュニティの設立時には「アルムナイの方がなかなか登録をしてくれないのでは?」といった、ご担当の方の不安なお気持ちを耳にすることもあります。そのあたりはどのように対策されましたか?
千馬:
プレスリリース、メディア掲載など幅広く多くの方にアルムナイの活動を届けられるようにしました。意外にも、退職してから期間が空いているアルムナイでも、当社のニュースを見てくれているようで、外部発信をきっかけとした登録も多かったです。
永田:
私も最初は登録について心配な気持ちもあり、知り合いの退職者に直接声をかけていったのですが、逆に「もう知ってるよ」といった返答が多かったです。「〇〇さんから聞きました」とか弊社もNHKのローカルニュースで取り上げていただいたため、「ニュースを見ました」というお声もいただいて、あらためて退職者同士のつながりの強さを感じましたね。
─ 両社とも、アルムナイの登録においてはポジティブにすすめることができたのですね。その他、導入に至るまでのご苦労や葛藤のようなものはありましたか?
永田:
弊社が拠点とする九州では、まず「アルムナイ」という言葉にあまりなじみがないと考えていたので、やはりそういった面では苦労するかな…と不安を感じていました。ですが、導入の目的をしっかりと整理しながら進めることで、この取り組みが事業戦略につながるものであると理解を得られスムーズに導入することができました。
千馬:
当時はアルムナイネットワーク自体が流動性の高い業界を中心に取り組まれていた先進的な施策で、電力業界での事例もあまり無い中でしたので、私も会社へ提案するときには、なかなか理解してもらえないのでは?と不安を抱えたこともありました。しかし、当社と東北・新潟地域の大きな課題である、「首都圏に流出する人材といかに接点を持つか」「どのように彼らの持つ知見と当社の共創を通じた新しい価値を作るか」に対して糸口を見つけるための施策がアルムナイネットワークであると社内で丁寧に説明したことにより、理解を得ることができました。提案して本当によかったなと感じています。
─ では次に、現在のお取り組みやご状況について具体的にお聞かせください。
永田:
8月下旬にスタートし、今はちょうど2 ヶ月ほど経過したところなのですが、予想より多くのアルムナイの方々にご登録いただいてるという印象です。すでに再入社の話が進んでいる方もいて、年内には1名の方の再入社を予定しています。
千馬:
弊社は先日、初めてのリアルイベントを開催しました。短期間でのご案内ながら参加したアルムナイは16名に。アルムナイの中に醸造所を経営している方がいるのですが、その方が作ったクラフトビールで乾杯をして盛り上がる様子なども見られ「今は異なる場所で仕事をしていても、東北電力で同じ時間を過ごした共通項があるからこそ、退職した今もこうして垣根なく盛り上がれるんだな」と改めて思いましたね。
─ すごく素敵な光景ですね。アルムナイの取り組みは、社外で活躍してるみなさんとの“ビジネスの繋がり”というところも目的のひとつかと思いますので、この乾杯の場が、新しい価値提供、ビジネス連携の始まりに繋がっていくことを期待したいですね。
では最後に、今後の展望についてそれぞれお聞かせください。
永田:
地域金融機関である弊社の場合、やはり元々は地域貢献を目指し入社をしてきた社員が多いのではないかと思っています。ただ、専門性を身に付けたいといった思いなどから、東京などの会社へ挑戦する方も一定数いるでしょう。そうした方々がキャリアを積み「また地元に帰って地域へ貢献したいな」と思ったときに、このアルムナイコミュニティが協業や再雇用の情報提供などをする“橋渡し”のような存在になれると嬉しいです。
千馬:
アルムナイネットワークは地域の課題を解決する可能性のある取り組みだとあらためて感じています。東北電力アルムナイは当社の事業変革を支える人的資本としてはもちろんですが、東北・新潟地域にとっても貴重な人的資本だと捉えることができます。そういった意味で、首都圏の企業様とはまた異なるアプローチでの価値創出もできるのではないかと期待しています。当社と東北電力アルムナイの取り組みが先進的な事例として他社の参考になれたらとても嬉しいです。
─ 地域の企業様も年々事業が多角化しており、社内にない知見や経験が求められている今、こうしたアルムナイネットワークのような社外の人的資本とのつながりは、非常に有用性が高いということをあらためて感じました。
両社のアルムナイネットワークも、これからもますます成長していかれると思いますので、またお話を伺える日を楽しみにしています。
本日はありがとうございました!
ハッカズーク 会社概要
会社名:株式会社ハッカズーク(英語名:Hackazouk Co., Ltd.)
代表者:代表取締役グループCEO 鈴木 仁志
所在地:東京都文京区後楽2-3-21 住友不動産飯田橋ビル5階
設立:2017年7月
事業内容
・『オフィシャル・アルムナイ』の企画・開発・販売・運営
・『アルムナビ』の企画・開発・運営
・人事・採用・アルムナイに関するコンサルティング
ウェブサイト:https://hackazouk.com/
サービスページ:https://official-alumni.com/
アルムナビ:https://alumnavi.com/
問い合わせ先:
contact@official-alumni.com